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誰にでも起こりうる脳出血の身近な原因とは?
【専門医解説】

はい、今日はですね、この間お話した脳梗塞の続きで、脳出血のお話をしたいと思います。
脳出血というのは頭の中で出血する、こういう病気ですけども、怪我で起きるものと、病気で起きるものと、ちょっと分けて考えましょう。

今日は病気で起きるものの脳出血の話をします。
脳出血の原因もたくさんあるんですけども、細かいこと言いますと皆さんわかりづらくなりますから、今日は典型的な例からお話しします。

脳の中はですね、実は太い血管が何本かあるその中から、糸くずのような細かい血管が分かれてきて、脳の深部を循環して血を送って養っています。
太い血管からいきなり細かい血管に枝分かれするので、ほぼですね、直角に分かれてくるんですね。
ですから言うなれば、ストローから無数の毛が三位に分かれて出るような感じです。
この細い毛のようなところに突然高い血圧の血が流れ込むので、元々破けやすいんですね。
破ける場所が決まってまして、脳の深部の【視床・被殻・尾状核】こんなところが破けやすくなります。

この場所はですね、脳の中でも非常に重要な働きをしていまして、手足の動きを司る場所であるんですが、もっと言いますと、運動のプログラムを円滑に行う為の変換機なんです。
例えば、こういう動きとこういう動きは、全然違いますね。
単なる動きはですね、オンとオフなんでこういう動きしかできないんです。
スピードとか方向とか位置とか色々な筋肉を同時に動かすというような事は、脳の中の調節性系の働きがないと、スムーズにできないんです。
その動きをスムーズにプログラムに則って意味のある動きにしていく、ということの調整を脳の中心部でやっているんです。
その中心部の近くで出血を起こすので、半身不随という症状の他に、動かしづらさがずっと残ったりする、うまく使えなくなる、とこういった運動機能全体の問題が起きやすくなります。

この脳出血の原因は、圧倒的に【高血圧】です。

血圧が高ければ非常に高率に起こします。
私が医者になった頃、血圧を下げるお薬がほとんどありませんでした。
ですから、40歳半身不随、言語障害なんていう人がぞろぞろいました。
みんな血圧が下げられずに脳の血管が切れて、半身麻痺になってしまいました。

ですから、脳出血は血圧の管理を徹底的にするということが重要です。

血圧のところでお話をしましたように、血圧はどのぐらいから上が危ないかというのが明確に決まっています。
理想的には125/80mmHgを割るような状態が理想で、135/85mmHgを超える状態が続くのは危ないんですね。ですからこれも簡単な話で、家庭の血圧計で十分わかる訳です。

血圧が高めであるのに放っておく、薬を飲めと言われたのに飲まない、飲んでいても十分に下がらない中途半端な薬なのに、更に強くしないでいい加減なままで管理する、こういったことをしてきますと、いつか脳出血を起こしやすくなります。

ただ脳出血は血圧が高くて起きるんですけど、同時に血圧が高いと動脈硬化が進むので、上手く脳出血をかいくぐっても、今度は脳梗塞ということが待っています。また両方とも起こす方も多いんですね。
このように脳血管障害は、動脈硬化という生活習慣病の結果起きた血管の “硬さ” と “狭さ” が合わさって、血が出たり詰まったり様々なことが起きてきます。

そういう点で皆さんは、ぜひ血圧の管理をシビアにしてください。

血圧のとこで申し上げましたが、瞬間的に200あっても切れたりしません。
朝起きてお手洗いを済まして、リラックスした状態で座って2回測った値が135を超えていることが主であれば危ないけども、135/85を割っていることが殆どで、たまに190ある、その日運動してもお風呂入っても何も起きませんので、その日の血圧の数字を怖がらないでください。

2週間〜1ヶ月の長い目で見て、大体自分の朝の血圧が高めなのかそうでないのかを見極めましょう。

冬になると血管が収縮して、元々血圧が高めの方はより目立ってきます。
夏と冬では大きく血圧が異なりますので、寒くなる方が脳出血が増えるんですが、この冬の段階で血圧が高くなっても、夏の薬のまま放っておくと切れやすくなります。
日本で暮らす以上、血圧の薬は四季に応じて変わらなければいけません。
「また強くするんですか?」て言わないでください。
適正な数字を維持しなければ意味ないんですね。
皆さんが受験勉強した時に、こんなに勉強したのに落ちましたと、それは合格点を取らなかったからですね。
血圧も合格点があるので、合格点を取らなければ、どんな努力しても水の泡になります。
このことは重要ですから、ぜひ主治医の先生とお話をしてください。

それから最後にくも膜下出血の話をします。

くも膜下出血は、生まれつき持った動脈の壁の薄い部分があって、そこに何十年もかけて血圧がぶつかると、風船ガムのように膨らんで、そして動脈瘤という瘤になり破裂する病気です。
くも膜下出血は、突然死を起こすことが多く、またくも膜下出血の方の5割ぐらいは死んでしまいますので、死亡率が高いんですね。
生活習慣病とは無関係なんですから、若い方に多いんですね。
40〜50代の女性にくも膜下とっても多いんです。
ですから、とても健康体で元気であっても、くも膜下で即死というケースは残念ながらあります。

若干の遺伝性がありますけども、ほとんどありません。
女の方の兄弟同士の遺伝性、姉妹同士ですね、はあるので、そこは要注意ですが、お母様と娘さんの関係も少しありますけど、ほとんど無いので、これは人間ドックで脳ドックを見て、動脈瘤があるかないかMRIで見ない限りどうにもならないです。

そういう意味では、ある年齢になったら、動脈硬化の病気が無い健康体な自信のある方でも、脳ドックをお受けになって動脈瘤を見つけることが重要です。

動脈瘤がもし見つかった場合に、形が歪だったり、5ミリ以上の大きさだったり、また場所から破けやすさが大体推定できます。
5ミリ以上あるものが見つかった場合には、ほぼ破けますので、手術をおすすめします。
手術は血管の中から管を入れて、動脈の瘤をつめるつめ方と、頭を開けて外から洗濯バサミのようなクリップでつまむやり方と2つあるんですが、両方とも一長一短があって、やりやすさが個々の症例ごとに違います。

症例によっては両方とも合わせ技でー本、という風にしなきゃいけない症例もあるので、これは医者の指示に従ってください。

頭を開けてもつめ物してもどちらでもいい、ほぼ同じリスクとベネフィットの場合には、患者さんの気持ちが優先になります。
ただし 手術をした後の合併症や死亡率はどちらのやり方でも、おおむね1%内外で一緒です。
ですから、頭を切られるという感情的な嫌さ加減はわかるんですが、一番安全で確実な方法を選ぶと、それは瘤の位置と場所、それから血管の形などによって決まるので、そこはあまり我を張らずにですね、やった方がいいと思います。

ただ、形の綺麗な瘤や5ミリ未満の瘤は、ほとんど破裂しませんので、これは年に1回脳ドックで形が変わってないかどうか見るだけで十分です。
まあ強いて申し上げると、高血圧とタバコは動脈瘤を大きくさせやすくなるので、禁煙と血圧の管理は重要になります。

今日は脳卒中の中で、出血を起こす病気、脳出血とくも膜下出血のお話をしました。
ご清聴ありがとうございました。