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逃してはいけない脳梗塞のサインとは?
【突然死を防ぐ為に】

はい、鈴木 慶です。中々アップ出来なくて申し訳ありません。
色んなご質問を頂いているのでお答えしていきたいと思いますが、今日はですね、脳卒中の話をしたいと思います。

脳卒中と言うとなんか縁遠い感じがするかもしれませんが、卒中というのは突然倒れるという意味で、脳の病気で突然倒れる、まあ従来、昔まだ検査が不十分だった時に、何の病気かわからなくて、ただ突然倒れて意識を失くす、半身不随になる、即死する、こういったものを脳卒中と呼んでいました。
その名残で今でも脳卒中という言い方をするんですが、卒中じゃなくて倒れる前に、症状が無いまま見つかるケースも増えてきていますので、そういったものも含めて脳血管障害と言います。

脳血管障害というのは、今でも日本人の死亡原因の3番目に入る程、とても多いものなんですが、大きく分けて3つのタイプがあります。
くも膜下出血と、脳出血、脳梗塞、この3つが代表的なものです。その1つずつについて話をしていきたいと思います。

実は1番多いのは脳梗塞なんですね。

脳梗塞というのは、脳の血管が詰まって、詰まった先に血が行かなくなって、脳が死んでしまう状態を言います。
もちろん脳が全部死んでしまったら生きていけませんが、その壊れた脳の大きさと場所によって、無症状から非常に重い障害、中には死に至るまで、たくさんの状態が考えられます。
ですから、脳梗塞の症状というものは決まったものは無いんですが、良く起こす脳梗塞のタイプとして、片麻痺、俗に言う半身不随というのがあります。

急に手が動かなくなった、こうやってびっくりされる方がいっぱいいると思いますが、足が動かなくなったということで、外来に来る方もいます。
足が動かなくなったというのは、脳卒中のこともあるんですが、頻度的には手がなんでもなく足だけが動かないとう場合には、脳よりも腰の脊髄の病気のことが多いです。また、口がうまく動かない、顔の症状が伴う場合には、とても脳の可能性が高くなってきます。

半身不随、片麻痺ということですが、右側が麻痺になると右の片麻痺、左側が左の片麻痺と言いますけど、脳というのは左側の脳が右の手を動かしています。
右の脳が左の手を動かしていますので、もし右の手足が動かなくなると、左側の脳に病気がある、といういうのが一般的です。

ところで、左の脳と右の脳というのは、同じ形をしているんですけども、どのように働きを分けてるんでしょうか。

実はですね、右利きの方の99%の人と、左利きの方の75%の人は、左側の脳が優位半球、優位というのは優位劣位の優位で、要するに重要な働きをするという意味なんですが、左側が優位半球です。
優位半球の働きは、1番重要なのは言葉なんです。
心で思ったことを言葉に変える、字に書く、もしくは声に出す。これは優位半球の左側の前頭葉の働きです。
そして、耳から入ってきた音、もしくは目から入ってきた文字を言葉として理解する、これは左側の側頭葉から頭頂葉にかけての場所の働きです。
ですから、右の手足が動かなくなったという時は、言葉もお話ができなくなった、もしくは耳から入ってきた言葉や、目から入ってきた文字が全く異国の言語のように理解できなくなる、こういう症状が出る事があります。

これを失語症と言います。
ですから右の麻痺が出ると、失語症を伴いやすいという意味で、利き手の右手が動かしづらく、言葉が理解したり、お話をしたり、書いたり読んだりできなくなりますと、非常に生活がしづらい症状になります。

こういった優位半球の症状はとても怖いんですけども、じゃあ右側の脳は何をしてるんでしょうか。

左利きの方の25%と右利きの方の1%の方は右の脳が優位半球ですので、この場合には右の脳が侵されると、言葉が喋れなくなったりしますけども、ほとんどの方は右の脳は言語とは関係ありません。
従来この劣位半球と呼んで、大した働きをしてなかったんじゃないか、なんて言われてた時代があるんですけど、左側の手を動かしたり足を動かすだけの働きかなというような時代もあったんですが、実は右の脳は非常に重要な働きをしています。

物事を立体的に考えたり組み立てたりする、こういう働きは全部右の脳がしています。
それから例えばイメージした順番に洋服を着ていく、こういったことも右の脳の働きです。
ですから、右の脳が侵されますと、例えばですね、下着をいつのタイミングで着ていいか分からずに、最初に服を着た上で下着をつけてしまうとか、例えば片付けが全く出来なくなってどのように収納していいのか分からなくなるとか、例えば紙の上に立体的な絵を描くことができなくなるとか、そういったですね、イメージを形にしたり、意識の中で作っていくことができなくなるので、実はこれ非常に困るんです。 家事ができないとかですね、生活の上でとても困ります。

こういった劣位半球と言われていた脳でも、失行と言いまして、何かを思ったことをやろうと思っても、手足がどのように使ったらそれができるのかイメージできない、例えば歯ブラシを持っても歯を磨くということが、どうしていいのかわからない、手が動くのにできないとかですね、失認、例えば歯磨き粉を見てもそれが何を意味するかわからないで、そのものがどういう働きをするのかわからないから使えないと、このような失認とか失行という症状も右の脳で起きてきます。

このように脳というのは、左右とも働きが色々と違うわけですが、そういった様々な働きを全部総括して、我々は普通の暮らしをしてるわけです。
脳卒中の怖いところはそういった脳の働きができなくなってしまう、脳がいったん壊れると原則復活することができませんので、そういったこと後遺症として残るという事が問題なわけです。

そして、できればそれを予防したいわけですけれども、一過性脳虚血発作:TIAという病気があります。
Transient Ischemic Attack:TIAと言うんですが、このTIAは血管が詰まりかけていて血の流れが悪くなっている、例えば30ccの血が1分間流れないと、脳細胞は麻痺してきますし、15cc流れないと死んでしまうんですが、あるとき35~6cc、ある瞬間29ccしか流れないといった、かなり血管が詰まっていて、血圧の影響によって、血流がギリギリ正常か、ギリギリ異常かの境を彷徨うようなときに、症状が一過性に出て、1時間とか2時間で治ってくる、定義的には24時間で治るものを言うんですが、そういった一時的に症状は出るけど治ってしまった、これをTIAと言います。

TIAは治ったから患者さんは良かった良かったと思う人もいますけど、実はギリギリのところなので、大体一週間以内に大きな脳梗塞を起こします。
ラストチャンスを無視して病院に行かないで放っとくと、大変取り返しのつかないことになってしまうので、気をつけなきゃいけません。

でも、TIAにもならずに、もっと前の段階で分からないか、これは脳のMRI(Magnetic Resonance Imaging)を撮ったりする必要があります。
脳のMRIを撮れば、血管の詰まりかたや動脈硬化が分かります。
しかし脳梗塞には、動脈硬化で血管が詰まってくる生活習慣病、血圧や糖尿や煙草や肥満、コレステロールを長らく放っておいて、じわじわ詰まってなるべくしてなってく脳梗塞、というような数十年、数年の単位で進んでいくものもあれば、今まで元気で瞬間的にダメになるものもあります。

瞬間的にダメになる代表がこれが脳塞栓症です。

脳塞栓症というのは、他の場所でできた血の塊が突然飛んできて脳の血管を詰めるものなんですけども、例えば長嶋茂雄さんとか、オシム監督なんかも脳塞栓症で失語症が出てしまいました。

これはですね、心臓の心房細動という不整脈の結果起きるんです。
ですから、健康診断で不整脈を指摘されたら、心房細動をちゃんと見極めるまで検査をしてもらう、そして、MRIなどを撮って、脳の血管が詰まりかけてないかどうか見ると、そして、そういった病気のもっと前の原因である、血圧、糖尿、コレステロールや、肥満やタバコという生活習慣病のある方は、確実に毎年検査を受け、そして必要なお薬を飲んで、そういった事が全部正常値になるようにお薬でコントロールしておくと、通常は脳梗塞になりません。

でも既に血管が動脈硬化で細くなっている人や、心房細動がある方は、心房細動の場合には血が固まらなくなる、抗凝固薬、そして動脈硬化の強い場合には、抗血小板剤という、それぞれちょっと違う役割の脳梗塞の予防薬を先に飲んでおけば、大体は防ぐことが出来ます。

ですから脳梗塞は、日々の心掛けと検査によって、ほぼ予測でき予防できる病気であるという点で、もし症状がなくても、みなさんがメタボだな、タバコがやめれないな、血圧高いと言われたな、なんて時は必ず医療機関を受診して、細かく調べてもらってください。

今日は脳梗塞のお話でした。